もし防水工事がAIを活用したら?求人から見えた人手不足の正体と処方箋

業種別AI内製化

防水工事における人手不足の本質は「施工後の書類・アフターフォロー業務」の属人化にあり、AIを活用すれば一人の職人が担える現場数を増やしながら書類品質も向上できる。

防水工事は、雨漏りから建物を守るという意味で、すべての建物に欠かせない工事だ。屋上、バルコニー、外壁、地下——水が侵入しやすいあらゆる箇所に防水層を施す職人たちの仕事が、建物の寿命を左右する。

私がこの業種に強い関心を持つのは、宿泊施設のオーナーとして雨漏り被害を経験したことがあるからだ。「防水工事を頼みたいのに業者が見つからない」「見積もり依頼に返事が来ない」という状況は、まさにこの業界の人手不足を反映している。

防水工事の現場と、求人票が物語る人手不足

求人サイトで「防水工事」「防水工」と検索すると、こんな特徴が浮かぶ。「ウレタン防水・シート防水・アスファルト防水の施工経験者」「施工管理補助・現場調査ができる方」「現場調査から見積もり作成まで担える方は優遇」「未経験でも体力・やる気があれば」「一人親方も歓迎」——。

特徴的なのは「現場調査から見積もりまでできる人」への強いニーズだ。防水工事会社では現場の職人が施工だけでなく、現場調査・劣化診断・見積もり作成・施工後の保証書発行まで担うケースが多い。一人の技術者に要求される業務範囲が広すぎる。

また「一人親方歓迎」という表現が多いことも特徴だ。元請けから仕事を受ける一人親方・小規模会社が多い業界で、人を雇わずに一人で現場と事務を全部こなしている職人が多い。この「一人でこなす業務の重さ」がAIで解決できる部分だ。

求人から読み取れる3つの困りごと

困りごと①:現場調査・劣化診断レポートの作成に時間がかかる

防水工事の前には現場調査を行い、劣化の状況・工法の提案・費用の根拠をレポートにまとめる。「なぜウレタン防水を選んだか」「なぜこの工程が必要か」を顧客に説明できる文書が必要で、この作成に時間がかかる。

困りごと②:施工完了後の保証書・点検記録の発行が後回しになる

防水工事には施工完了後に保証書(10年保証など)を発行する義務がある。また点検時には点検記録書の作成が必要だ。現場に追われていると「書類の発行が後回し」になり、顧客からのクレームや信頼低下につながる。

困りごと③:工法の種類が多く、若手が適切な工法を選べない

ウレタン塗膜防水・シート防水(塩ビシート・ゴムシート)・アスファルト防水・FRP防水——用途・下地・コストによって適切な工法が異なり、「どの工法を選ぶか」はベテランの判断に依存している。若手が独立して判断できるようになるまでの期間が長い。

その困りごと、AIならこうなる

困りごと①:現場調査レポートの文章をAIで生成する

調査で確認した劣化状況と写真の説明文をAIに入力し、顧客向けの調査レポートを作成させる。「このクラックはなぜ危険か」「この膨れはなぜ発生するか」という説明文を、専門外の顧客にも伝わる言葉に変換してもらう。

【プロンプト例:屋上防水の現場調査報告書の作成】
以下の調査結果を基に、建物オーナー向けの「屋上防水劣化調査報告書」の説明文を作成してください。

建物概要:築22年・RC造5階建てビル・屋上面積約300m²
調査結果:
- 防水層(アスファルト防水)の表面に多数のクラック(0.3〜2mm幅)確認
- 排水口周辺に膨れ(ブリスタリング)3箇所確認(最大径30cm)
- パラペット笠木の目地シールの劣化・欠落あり
- 内部からの漏水跡は現時点でなし

報告書に含める内容:
1. 現状の問題点と危険度の説明(専門用語は使わず分かりやすく)
2. このまま放置した場合の想定リスク
3. 推奨工法と工法選択の理由
4. 工事のタイミングに関するアドバイス
【プロンプト例:防水工法の選定理由の説明文生成】
以下の条件で、顧客向けの「工法選定の理由」説明文を作成してください。

条件:
- 部位:マンション10階バルコニー(約15m²)
- 選定工法:ウレタン塗膜防水(通気緩衝工法)
- 理由として含めてほしいこと:
  - 下地がモルタルで水分を含んでいるため密着工法が不適
  - バルコニーなので居住者の歩行に耐える仕上げが必要
  - 他の工法との違いとメリット

対象読者:マンション管理組合の一般組合員(防水の専門知識なし)

困りごと②:保証書・点検記録書のテンプレートをAIで整備する

保証書・点検記録書のフォーマットをAIに一度作らせ、毎回そのテンプレートを使い回す。「フォーマットを作る時間がない」という一人親方が最も使いやすいAI活用パターンだ。

困りごと③:工法選定の判断基準をAIとの対話でまとめる

「このケースはどの工法が適切か」という判断基準を、AIとの対話で整理し、社内マニュアルとして文書化する。ベテランが「感覚でやっている」選定ロジックを体系化できる。

【プロンプト例:若手向け防水工法選定チャートの作成】
防水工事の若手職人向けに、「どの工法を選ぶか」の判断フローチャートを作成してください。

判断分岐として含めてほしい要素:
- 部位(屋上・バルコニー・外壁・地下)
- 下地の種類(コンクリート・モルタル・既存防水層の有無)
- 歩行頻度(非歩行・軽歩行・歩行)
- 予算感(コスト優先か耐久性優先か)
- 施工環境(臭気・火気使用の可否)

テキスト形式のフローチャート(Yes/Noで分岐)で表現してください。

導入ステップと費用感

ステップ1(月数千円〜):一人親方・少人数工場から書類作成に使い始める
現場調査レポートと保証書テンプレートの整備から始める。一度作れば繰り返し使え、書類作成時間が大幅に減る。

ステップ2(月1〜2万円程度):顧客提案力の強化にAIを活用
「なぜこの工法か」を分かりやすく説明できる提案書をAIで作成し、受注率向上につなげる。

ステップ3(補助金活用):現場管理・顧客管理システムへの発展
デジタル化・AI導入補助金(最大450万円・補助率1/2〜2/3、最新の公募要領で要確認)を活用し、顧客管理CRMや点検アプリとのAI連携を検討できる。

よくある質問

Q. 防水工法の詳細な技術的内容はAIに分かるのか?
ウレタン防水・シート防水・アスファルト防水の基本的な施工方法・特徴・適用条件はAIが学習しています。ただし現場固有の下地状況・特殊な劣化事例などは人間の判断が不可欠です。AIは「文章化・整理の補助」として使い、最終的な工法選定はプロが行うという分担が最も現実的です。

Q. 一人親方でもすぐに使えるか?
はい、特別な設備投資は不要です。スマートフォンがあれば今日から始められます。一人で現場も書類も全部こなしている方こそ、AIで書類作成の負担が劇的に減ります。私も宿泊業という「一人でいくつもの仕事を抱える立場」でAIを活用しており、その効果を実感しています。

Q. 顧客への説明が下手で受注を逃すことが多いのだが改善できるか?
間違いなく改善できます。「なぜこの工法が必要か」を分かりやすく伝える提案書をAIで作成することで、顧客の理解と信頼が高まります。「専門家が親切に説明してくれる会社」という印象は受注率に直結します。


山崎恭平/AI内製化総合研究所 所長
株式会社インバウンドホールディングス専務取締役。営業と交渉の世界で成果を上げてきた一方、パソコン作業は横で支えてくれる事務方に頼りきりだった。AIの登場で、一番苦手だったパソコン作業が「自分でできる」に変わり、気づけば中小企業から上場企業まで10社以上のAI顧問を務めるように。スプレッドシートの関数すら分からなかった私でもできた——だから、誰でもできる。AIの学校や顧問にお金を払い続けるのは、本質的にもったいない。初期は人を頼ってもいい。でも最後は自分たちで内製してほしい。そんな思いで、このメディアを作った。

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