配管工の人手不足の核心は「施工ノウハウの属人化」と「書類・報告書作成の工数増加」にあり、AIを使えばベテランの知識を文書化しながら書類作成時間を半分以下にできる。
配管工という仕事は「水が通る」「空気が流れる」「ガスが届く」という、現代生活のインフラを物理的につなぐ仕事だ。ホテルや旅館を運営する私にとって、配管は建物の血管であり、この専門家が現場にいないと何も始まらない。
だからこそ人手不足が深刻だ。私の宿泊施設のリニューアルを担う工務店からも「配管工が見つからない」という声を何度も聞いた。求人票を読み込んでみると、その深刻さと課題の具体的な中身が見えてくる。
配管工の現場と、求人票が物語る人手不足
求人サイトで「配管工」「管工事」と検索すると、こんな傾向が見えてくる。「給排水・空調配管の施工経験者」「管工事施工管理技士の資格取得支援あり」「施工図・施工計画書の作成ができる方は優遇」「未経験歓迎・現場で一から育てます」「週休2日・残業ゼロ宣言」——。
特徴的なのは「施工図が読める・書ける」という条件の重さだ。配管工は現場で鉄管・塩ビ管・ステンレス管を加工・接続するだけでなく、施工前に施工図(何階のどこにどの管を通すか)を自分で引く必要がある会社も多い。それができる人材が著しく不足している。
また「施工管理技士の資格取得支援」を前面に出す求人が増えており、「現場職人に施工管理もやってほしい」という現場の要求が高まっていることがわかる。
求人から読み取れる3つの困りごと
困りごと①:施工計画書・施工図の作成に熟練者の時間が食われる
給排水・衛生設備・空調設備の施工計画書は、建築施工計画書の中でも専門性が高い。「どのルートで配管を通すか」「他業種の配管・電線との取り合いをどう解決するか」——この検討と文書化がベテランの工数を大きく圧迫している。
困りごと②:水圧試験・通水試験の記録書類が煩雑
配管工事の完成後には水圧試験・満水試験・通水試験を実施し、その結果を記録書として提出する必要がある。この書類は顧客・元請けへの納品書類として重要だが、「書類が苦手」という職人も多く、作成が遅延することが現場の課題になっている。
困りごと③:若手が「配管のセオリー」を体系的に学べる環境がない
配管のルート取り・勾配の設け方・管の種類の使い分け——これらは「見て覚えるもの」とされてきたが、OJTだけでは若手の理解に時間がかかる。ベテランが体系的に教える余裕がなく、若手が「なぜこの配管ルートになるのか」を理解しないまま作業している。
その困りごと、AIならこうなる
困りごと①:施工計画書の文章パートをAIで生成する
「施工概要」「施工手順」「品質管理計画」などの文章セクションをAIに下書きさせる。現場のベテランが確認・修正するだけで提出できるクオリティになる。
【プロンプト例:給排水配管工事の施工計画書作成】
以下の条件で、給排水配管工事の施工計画書(概要版)を作成してください。
工事概要:
- 工事名:○○マンション(新築RC造12階建て)給排水衛生設備工事
- 主な工事内容:給水・給湯・排水・通気配管、衛生器具取付
- 工期:8ヶ月
- 作業人員:職長1名・配管工5名・雑工2名(最大時)
作成する項目:
1. 施工概要と施工方針
2. 施工手順(フロア別の工程の流れ)
3. 品質管理のポイント(防水検査・水圧試験・勾配確認)
4. 安全管理(主要リスクと対策)
元請けへの提出書類として、専門用語を正確に使いながら分かりやすく書いてください。
【プロンプト例:水圧試験記録書の作成フォーマット】
給排水配管工事の水圧試験記録書のフォーマットを作成してください。
試験対象:給水配管(0.75MPa加圧・30分保持)
記録が必要な項目:
- 試験日時・天気
- 試験対象系統・フロア
- 試験圧力・保持時間
- 試験前・中・後の圧力計読み値
- 漏水有無の確認結果
- 確認者(職長・監理者)のサイン欄
- 特記事項
Excelに転記しやすい表形式で出力してください。
困りごと②:若手向けの技術解説をAIで生成する
「給水管と給湯管はなぜ30cm離して配管するのか」「排水管の勾配はなぜ1/100が基本なのか」——こういった「なぜ?」の解説をAIに書かせる。若手向けの「配管の教科書」を社内で作れる。
【プロンプト例:配管施工の基礎知識解説】
若手配管工向けに、以下のテーマについて分かりやすく解説してください。
テーマ:「排水管の勾配はなぜ必要で、どう決めるのか」
解説に含めてほしいこと:
1. 勾配がないと何が起きるか(詰まり・臭気の理由)
2. 標準的な勾配の目安(管径別の目安)
3. 現場で勾配を確認する簡単な方法
4. やってしまいがちなミスとその防止策
対象:配管工として働き始めて1年以内の若手。現場経験はあるが理論は弱い。
困りごと③:採用活動の文章をAIで量産する
配管工の採用に苦戦する会社が多い。求人票・自社ホームページの仕事紹介文・Indeedの会社説明文——これらをAIで作成することで、「採用チームがいない小さな会社」でも発信力を上げられる。
導入ステップと費用感
ステップ1(月数千円〜):職長・現場代理人が書類作成にAIを使う
施工計画書と試験記録書のフォーマット作成から始める。一度フォーマットを作れば毎回使い回せる。
ステップ2(月1〜2万円程度):若手育成資料をAIで整備する
「配管の基礎知識テキスト」をAIで作成し、新人研修に活用する。採用文章の作成にも活用する。
ステップ3(補助金活用):施工管理ソフトとのAI連携
デジタル化・AI導入補助金(最大450万円・補助率1/2〜2/3、最新の公募要領で要確認)を活用し、配管設計ソフトや現場管理アプリとのAI連携を検討できる。
よくある質問
Q. 配管の専門的な計算(管径計算・流量計算など)はAIにできるか?
基本的な管径計算や流量計算の考え方はAIに説明できます。ただし実際の設計計算は設備設計の専門ソフトや規格に基づいて行う必要があります。AIは「計算の考え方の確認」「計算根拠の説明文作成」には使えますが、最終的な設計数値の確定は専門家の確認が必要です。
Q. 水道法・建築基準法などの法令はAIに正確に答えられるか?
主要な法令の基礎的な内容はAIが学習しています。ただし法令は改定があるため、AIを「方向性の確認」に使い、最終判断は常に最新の法令・指針で確認するルールを設けてください。
Q. 現場の職人が書類を書くのを嫌がるのだが、AIで変わるか?
「AIに話しかけるだけで書類ができる」となれば、書類作成へのハードルが大幅に下がります。私の経験上、「書類が苦手」という人ほどAIの恩恵が大きい。話しかけるだけで下書きが出てくるので、あとは確認して署名するだけになります。
山崎恭平/AI内製化総合研究所 所長
株式会社インバウンドホールディングス専務取締役。営業と交渉の世界で成果を上げてきた一方、パソコン作業は横で支えてくれる事務方に頼りきりだった。AIの登場で、一番苦手だったパソコン作業が「自分でできる」に変わり、気づけば中小企業から上場企業まで10社以上のAI顧問を務めるように。スプレッドシートの関数すら分からなかった私でもできた——だから、誰でもできる。AIの学校や顧問にお金を払い続けるのは、本質的にもったいない。初期は人を頼ってもいい。でも最後は自分たちで内製してほしい。そんな思いで、このメディアを作った。

