マイソク(物件紹介資料)をAIで作るとは、ChatGPTやClaudeなどの生成AIに物件情報を与えてキャッチコピー・物件説明文・特徴訴求ポイントを自動生成させ、担当者が法的確認を加えて仕上げるワークフローのことです。
私は宅地建物取引士を持っています。その上で言わせてください。マイソク作成は不動産業で最も時間を食っている割に、最もAIで代替しやすい業務の一つです。
構造を考えてみてください。マイソクに書く内容のほとんどは「物件情報の整理・表現」です。データは同じなのに、担当者が毎回ゼロから文章を考える。これは人間がやる必要のない仕事です。一方、法的表記・重要事項に関わる内容は絶対に人間が確認しなければならない。この役割分担を明確にすることが、AI活用の出発点です。
1. AIでマイソクを作る:基本の手順
手順はシンプルです。ポイントは「情報を構造化してAIに渡す」こと。雑に渡すと雑なアウトプットが返ってきます。
ステップ1:物件情報を箇条書きにまとめる
物件種別:マンション(居住用)
所在地:〇〇市〇〇区(最寄り駅:〇〇線〇〇駅 徒歩7分)
専有面積:72.5㎡
間取り:3LDK
築年:2008年(築17年)
設備:オートロック、宅配ボックス、床暖房(LDK)
管理費:15,000円/月
修繕積立金:8,000円/月
価格:3,980万円
特徴:角部屋・南東向き・リフォーム済み
ターゲット:30代〜40代子育てファミリー
ステップ2:プロンプトを入力する
「上記の物件情報をもとに、以下の3点を作成してください。①キャッチコピー(30字以内)②物件説明文(200字程度、購買意欲を高めるトーン)③この物件の訴求ポイント3つ(箇条書き)。対象読者:30〜40代子育てファミリー」
ステップ3:複数バリエーションを生成して選ぶ
「他に3パターン作ってください」と続ければ、表現の異なる候補が出てきます。担当者の感覚で最も刺さるものを選び、微調整するだけで完成します。
2. 宅建士が教える「AIに任せてはいけない5項目」
AI活用で最も危険なのは「全部やってもらえると思い込むこと」です。マイソクで人間が必ず確認すべき項目を整理します。
①法令上の制限(用途地域・建蔽率・容積率)
AIは入力された情報しか使えません。用途地域や法的制限の記載が正確かどうかは、登記情報・都市計画情報を人間が確認して担保してください。
②登記情報・権利関係
所有者・抵当権の状況など権利関係の記載は、AIが推測した内容を使ってはいけません。必ず公的書類と照合してください。
③誇大広告の回避
宅建業法上、「最高」「日本一」などの誇大表現は禁止されています。AIは時として誇大な表現を使うことがあります。生成文を確認する際はこの点も必ずチェックしてください。
④面積・価格などの数値
AIが数値を創作することはないはずですが、入力値の転記ミスや表記の誤りは起こりえます。数値はすべて原本と照合する習慣を持ってください。
⑤重要事項説明に関わる内容
重要事項説明書の内容はAIで作成してはいけません。これは宅建士の業務領域であり、法的責任が伴います。
3. ツール選択の考え方(2026年6月時点)
マイソク作成に活用できる生成AIツールは複数あります(各ツールの価格・機能は公式サイトで要確認)。
ChatGPT(OpenAI):日本語の文章生成精度が高く、不動産用語の理解も十分。カスタムインストラクション(指示の保存)機能を使うと、毎回「不動産会社のスタッフとして」という前置きを省けます。
Claude(Anthropic):長文生成と構造化が得意。物件資料のような「一定の形式を保ちながら大量生成する」用途に向いています。
不動産特化型AIツール:マイソク作成に特化したSaaS型ツールも2026年時点で複数登場しています。既存PMSとの連携や一括生成機能があるものは作業効率が高い(公式サイトで要確認)。
汎用AIから始めて、業務量が増えたら専用ツールへ移行するのが最もリスクの少ない順序です。
4. プロンプト例集:シーン別に使い分ける
賃貸向け:単身者ターゲット
「1Kのマンション(築5年・駅徒歩3分・オートロック付き)の紹介文を、20代社会人の一人暮らし向けに、利便性と安心感を重視して150字で書いてください」
売買向け:投資家ターゲット
「表面利回り7.2%の中古アパート(地方都市・築25年・フルリノベ済み)の投資家向け紹介文を、収益性と管理コストに言及しながら200字で書いてください」
リノベーション物件向け
「築40年の戸建て(スケルトンリノベ可能)について、DIY・リノベ好きの購入者向けに、可能性とポテンシャルを前面に出した紹介文を200字で書いてください」
よくある質問
Q1. AIで作った物件紹介文に著作権はありますか?
2026年6月時点、AI生成物の著作権帰属は法整備の途上にあります。実務上は「AIが生成した草稿を人間が編集・確認した成果物」として扱うことで、担当者の著作物と整理されます。各AIサービスの利用規約も確認してください。
Q2. マイソクに使う写真もAIで生成できますか?
物件写真はAI生成画像を使うべきではありません。宅建業法上、実際の物件と異なる写真の使用は問題になります。写真は実写を使い、文章のみをAIで生成するというハイブリッドが正しい使い方です。
Q3. スタッフにAIでマイソクを作らせると品質のばらつきが出ませんか?
プロンプトテンプレートを会社で統一することで解決できます。「当社標準マイソクプロンプト」を作り、全スタッフが同じ入力形式を使うルールにするだけで品質が安定します。最初に1〜2名で検証してから全社展開してください。
山崎恭平/AI内製化総合研究所 所長
株式会社インバウンドホールディングス専務取締役。営業と交渉の世界で成果を上げてきた一方、パソコン作業は横で支えてくれる事務方に頼りきりだった。AIの登場で、一番苦手だったパソコン作業が「自分でできる」に変わり、気づけば中小企業から上場企業まで10社以上のAI顧問を務めるように。スプレッドシートの関数すら分からなかった私でもできた——だから、誰でもできる。AIの学校や顧問にお金を払い続けるのは、本質的にもったいない。初期は人を頼ってもいい。でも最後は自分たちで内製してほしい。そんな思いで、このメディアを作った。
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