【やってみた】葬儀社の難しい言葉づかい、AIはどこまで対応できるか本気で試してみた

180 業種別AI内製化

葬儀社の「言葉に迷う業務」——会葬礼状・初回問い合わせへの返信・スタッフ向け言葉遣い研修資料——はAIが最も力を発揮できる領域であり、今日から使える成果物を本気で生成してみた。

葬儀社は、AI活用の話が出るたびに「うちは特殊だから……」と一歩引く業界だと感じている。確かに、お客様が最も悲しく、最も傷つきやすい瞬間に寄り添う仕事だ。言葉ひとつのミスがクレームどころか、遺族の心に深い傷を残す可能性もある。

だからこそ私は思う。「AIに任せきりにするのではなく、正しい言葉の下書きをAIに作らせて、人間が確認して使う」というプロセスが葬儀社に最も向いているのではないかと。

今回は実際にAIに問いかけ、現場で使えるレベルの成果物を生成してみた。その全記録をお見せする。


実際にAIに頼んでみた

① 会葬礼状の作成

葬儀社が最も「言葉に迷う」業務のひとつが会葬礼状だ。通夜・葬儀に参列してくださった方への感謝状で、故人の名前・喪主の名前・使う言葉のひとつひとつに気を使う。私が実際にChatGPTに投げたプロンプトと、その回答がこれだ。

【実際に投げたプロンプト:全文】

あなたは葬儀社の経験豊富なスタッフです。
以下の情報をもとに、会葬礼状(参列者へのお礼状)を作成してください。

【故人情報】
・故人の続柄と名前:父・山田太郎(享年78歳)
・逝去の状況:病気療養中のため(詳細は不要)
・葬儀の形式:家族葬(一般会葬を制限した形式)

【喪主情報】
・喪主:山田花子(故人の妻)
・連名:子ども一同

【礼状の要件】
・文語調(現代語でありながら格調ある表現)
・参列してくださったことへの感謝
・故人が安らかに旅立てたことへの言及
・家族への温かい見守りのお願い
・忌み言葉(重ね言葉・直接的な死の表現)は使わない
・文字数:縦書き想定・280〜320字程度

また、以下の点に注意してください:
・「死ぬ」「死去」などの直接的な表現を避ける
・「重ね重ね」「ますます」などの重ね言葉を使わない
・「返す返す」「続いて」なども避ける

【AIの回答:全文(これがそのまま現場で使えるレベルのものです)】


謹啓

このたびは亡父 山田太郎の葬儀に際しまして
ご多忙の中ご会葬くださいまして
誠にありがとうございました

おかげをもちまして 滞りなく葬儀を執り行うことができました
故人もさぞかし喜んでいることと存じます

生前に賜りましたご厚情に深く感謝申し上げますとともに
今後も変わらぬご指導ご厚誼を賜りますよう
お願い申し上げます

略儀ながら書中をもちまして
御礼かたがたご挨拶申し上げます

謹白

令和  年  月

喪主 山田 花子
        子ども一同


私のコメント: 一発でほぼ完成品が出てきた。忌み言葉のチェックもしっかりされており、文語調と現代的な読みやすさのバランスが取れている。実際の使用時は故人の名前・喪主名・日付を入れ、担当スタッフが一読して確認するだけでいい。作業時間は従来の30〜40分から、確認5分に短縮できる。


② 家族葬に関するホームページFAQの作成

葬儀社のホームページに「よくある質問」ページを作りたいが、「何と書けばクレームにならないか」「遺族の気持ちを傷つけない表現は何か」という不安から手が止まる——そんな声をよく聞く。実際に投げてみた。

【実際に投げたプロンプト:全文】

葬儀社のホームページに掲載する「家族葬についてのよくある質問」
ページを作成してください。

【前提条件】
・対象読者:家族葬を検討しているが、はじめての経験で不安な遺族・家族
・読者の心理:悲しみの中で情報を探している・不安が強い・押しつけがましい営業は嫌
・トーン:温かく・押しつけがましくない・専門的すぎない・「寄り添う」姿勢

【含めてほしいQ&Aのテーマ】
1. 家族葬とは何か(一般葬との違い)
2. 参列者の人数・範囲の目安
3. 費用の目安(具体額ではなく幅・傾向で)
4. 参列を断った方への連絡のタイミング
5. 香典・供花はどうするか
6. 家族葬でも葬儀の形式は選べるか(仏式・無宗教等)

【文体の注意点】
・「死亡」「遺体」などの直接的な言葉は避け、
  「ご逝去」「お体」などの表現に統一する
・各Q&Aは500字以内で、読み手が「わかった」「安心した」と感じる構成に
・Q:は遺族が実際に抱く疑問を自然な言葉で表現する

【AIの回答:全文】


Q1. 家族葬とはどのようなご葬儀ですか?

家族葬とは、ご遺族やごく親しい方々だけで、少人数でお見送りをするご葬儀の形式です。一般葬と異なり、広くご案内をしないため、参列者の人数を絞った落ち着いた式となります。「大勢の方にご参列いただくよりも、近しい家族だけで静かにお見送りしたい」というご要望が増えており、近年多くの方にお選びいただいている形式です。規模は小さくても、心を込めた丁寧なご葬儀を執り行うことができます。


Q2. 参列していただく方の人数や範囲はどう決めればいいですか?

特に決まったルールはなく、ご家族のご意向で自由にお決めいただけます。目安として、ご家族・ご親族のみで10〜30名程度というケースが多いですが、ごく少人数の数名から、少し広めに50名程度まで、様々な規模で執り行われます。「誰を呼ぶか」に迷われる方も多いのですが、「生前に故人と親しくしていた方」「ご逝去をお伝えしたい方」を基準にお考えいただくと整理しやすいかと存じます。ご不安な場合は、担当スタッフにご相談ください。


Q3. 費用の目安を教えてください。

家族葬の費用は、参列人数・ご希望の内容・地域によって幅があります。一般的には一般葬と比べて参列者が少ない分、会場費・返礼品・料理の費用が抑えられる傾向があります。ただし、「少人数だから安い」とは一概には言えず、ご希望される祭壇やお棺の仕様によっては費用が変わります。まずはお気軽にお問い合わせください。ご予算や状況に合わせて、担当者が丁寧にご説明いたします。


Q4. 参列をご遠慮いただく方へは、いつ、どのようにお伝えすればよいですか?

一般的には、ご葬儀が終わった後(四十九日以降など)に、挨拶状やお手紙でご連絡される方が多いです。「家族葬のためご連絡が遅くなりました」という形でご報告し、生前のお付き合いへの感謝をお伝えする内容が基本となります。ご葬儀前にお伝えするかどうかは、お相手との関係によって判断される方が多く、一律の決まりはありません。ご不安な場合は、担当スタッフにご相談いただければ文例のご提案もできます。


Q5. 香典や供花はどうすればよいですか?

家族葬では「香典・供花をご辞退」とお伝えするケースと、「通常通りお受けする」ケースに分かれます。ご遺族のご意向が最優先ですので、迷われる場合は担当スタッフにご相談ください。「香典をいただいた場合の返礼品(香典返し)はどうするか」なども含めて、一緒に考えさせていただきます。参列された方が「何もできなかった」と感じないよう、事前にお伝えしておく言葉の文例もご用意しています。


Q6. 家族葬でも仏式・神式・無宗教など形式は選べますか?

はい、選んでいただけます。家族葬はあくまで「参列者の規模」を表す言葉であり、宗教的な形式とは別のものです。仏式(僧侶による読経)・神式・キリスト教式・無宗教式(音楽葬・お別れの会など)のいずれもお受けしています。「特定の宗教にこだわらず、故人が好きだった音楽を流すだけの、シンプルな式にしたい」というご要望にも対応しています。ご希望をお聞かせいただき、最善の形をご提案いたします。


私のコメント: これは本当に驚いた。「遺体」「死亡」という言葉が一切使われず、全体的に読み手の不安に寄り添う文体が自然に保たれていた。プロンプトで指定した「寄り添うトーン」が完全に反映されている。このFAQをホームページに載せるまでの作業時間は、確認・微調整込みで30分以内だろう。


③ スタッフ向け「言葉遣い研修資料」の自動生成

葬儀社の新人スタッフ研修で最も時間がかかるのが「言葉遣い」だ。「どの言葉を使い、どの言葉は使ってはいけないか」を体系的に教えるための資料を、研修担当者が一から作るのは大変だ。

【実際に投げたプロンプト:全文】

葬儀社の新人スタッフ向け「言葉遣い研修資料」を作成してください。

【目的】
・葬儀社スタッフとして遺族に接する際に使うべき言葉・避けるべき言葉を
  体系的に学ぶ
・「悪気はなかったが傷つけてしまった」という失敗を防ぐ

【研修資料の構成】
1. 葬儀社での言葉遣いの基本姿勢(なぜ言葉が重要か・3つの原則)
2. 避けるべき言葉リスト(忌み言葉・直接的な表現・失礼な言い回し)
   → それぞれNG例とOK例(言い換え例)をセットで示す
3. シーン別の接遇フレーズ集
   ・ご遺族への初回対応(電話・来社)
   ・式場での案内・誘導
   ・お別れの場面での声かけ
   ・葬儀終了後のお見送り
4. よくある「うっかり言ってしまいがちな言葉」10選とその対処法

対象:葬儀業界未経験の新人スタッフ(入社1ヶ月以内)
文体:分かりやすく・具体的・暗記するより「考え方が身につく」形式で

【AIの回答:全文(抜粋・主要部分)】


葬儀社スタッフのための言葉遣い研修資料

1. 言葉遣いの基本姿勢——3つの原則

原則①「あなたは今、人生で最も辛い時間を過ごしている方の隣にいる」
葬儀の場に来られるご遺族は、大切な方を亡くされ、深い悲しみの中にいます。その状況で「うっかりした一言」が、想像以上の傷となることがあります。言葉を選ぶことは、プロとしての最低限の敬意です。

原則②「正確さより温かさを優先する」
情報を正確に伝えることは大切ですが、それ以上に「この人は私の気持ちをわかってくれている」と感じてもらえることが重要です。完璧な敬語より、心のこもった言葉を。

原則③「沈黙も言葉のひとつ」
何か言わなければという焦りから、余計な言葉を重ねてしまうことがあります。寄り添って静かにそばにいることが、最善の接遇になる場面も多いです。


2. 避けるべき言葉リスト(NG→OK言い換え表)

NG(避けるべき表現) OK(推奨する言い換え) 理由
死亡・死体・遺体 ご逝去・お体・故人様 直接的な死の表現を避ける
生きていたころ お元気だったころ・ご生前 死との対比を避ける
死に顔 お顔・お姿 直接的すぎる表現
自殺・事故死 突然のご逝去・思いがけないご不幸 死因の直接言及を避ける
安いプランで ご予算に合わせたご提案 値段の強調は失礼になる場合がある
決まりましたか? ご検討いただけましたか? 急かす印象を与えない
次の方もいるので (使わない・急かさない) 遺族への配慮を欠く
お疲れ様でした(葬儀後) ありがとうございました・ご苦労様でした 上から目線に聞こえる場合がある
わかりました かしこまりました・承りました 敬語の使い分け
ちょっと待ってください 少々お待ちいただけますでしょうか 丁寧さの差

3. シーン別の接遇フレーズ集

【ご遺族への初回電話対応】

(電話を受けた直後)
「このたびはご逝去のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。心よりお悔やみ申し上げます。このあといくつかご確認させていただいてもよろしいでしょうか。」

(詳細確認が必要な場合)
「大変お辛い中、恐縮でございますが、ご準備を進めるためにいくつかお伺いできますでしょうか。」

【式場での案内・誘導】

「こちらにお進みいただけますでしょうか。」(手の平を向けて身体全体で示す)
「足元にお気をつけください。」
「どうぞ、こちらにお座りください。」

【お別れの場面での声かけ】

「どうぞ、最後のお時間をゆっくりとお過ごしください。」
「お時間が来ましたら、お声がけいたします。どうかお気になさらず。」
(声かけが難しいと感じたときは)無理に声をかけず、少し離れて待つことも大切です。

【葬儀終了後のお見送り】

「本日はご多用の中、最後までお付き合いいただきありがとうございました。」
「○○様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。」
「どうぞ、お体に気をつけてお帰りください。」


4. うっかり言ってしまいがちな言葉10選

  1. 「大往生でしたね」→ 遺族にとっては年齢に関係なく悲しみは同じ。言わない。
  2. 「もう楽になられましたね」→ 「楽になった」という表現は遺族には届かないことが多い。
  3. 「お気持ちわかります」→ 本当にわかるはずがない。「どれほどお辛いか、お察しします」に変える。
  4. 「次のご予定は?」→ 葬儀後にすぐ「次」と言う表現は急かす印象を与える。
  5. 「他の方も同じようにされています」→ 比較は禁物。その方だけの葬儀という姿勢で。
  6. 「今日中に決めないと」→ 急かすことが遺族を傷つける。「ご都合が合うときに」を使う。
  7. 「それは無理です」→ 「少し難しい状況ではありますが、できる限り対応いたします」に。
  8. 「ご長男はどこですか」→ 家族構成を前提にした言い方は避ける。「喪主様はどちらでしょうか」。
  9. 「本当はこうした方がいい」→ 自分の価値観の押し付けに聞こえる。提案は「〜という方法もございますが」。
  10. 「よかったですね」→ どんな文脈でも、葬儀の場で「よかった」は使わない。

かかった時間と感想

この3つの成果物(会葬礼状・FAQ・研修資料)を生成するのにかかった時間は、プロンプトを書く時間も含めて合計で約35分だった。

正直、驚いた。

特に「言葉遣い研修資料」は、葬儀業界の専門知識がある人間が1〜2日かけて作るような内容が、一発で出てきた。忌み言葉の知識・シーン別フレーズ・「うっかり言ってしまいがちな言葉」のリスト——すべてが体系的にまとまっている。

もちろん、これで完成ではない。実際に使うには、担当スタッフが一読して「うちの事務所ではこう言っている」「この表現は地域の慣習と違う」という確認・修正が必要だ。でもそれは15〜30分でできる作業だ。

葬儀社の「言葉は怖い」という思いは正しい。だからこそAIを使って「まず正しい言葉の下書きを作り、プロが確認して使う」というプロセスが、業界に最も向いていると私は確信した。

AIに任せるのではなく、AIを使ってプロが仕上げる。それが葬儀社のAI活用の正解だ。


山崎恭平/AI内製化総合研究所 所長
株式会社インバウンドホールディングス専務取締役。営業と交渉の世界で成果を上げてきた一方、パソコン作業は横で支えてくれる事務方に頼りきりだった。AIの登場で、一番苦手だったパソコン作業が「自分でできる」に変わり、気づけば中小企業から上場企業まで10社以上のAI顧問を務めるように。スプレッドシートの関数すら分からなかった私でもできた——だから、誰でもできる。AIの学校や顧問にお金を払い続けるのは、本質的にもったいない。初期は人を頼ってもいい。でも最後は自分たちで内製してほしい。そんな思いで、このメディアを作った。

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