葬儀社の「言葉に迷う業務」——会葬礼状・初回問い合わせへの返信・スタッフ向け言葉遣い研修資料——はAIが最も力を発揮できる領域であり、今日から使える成果物を本気で生成してみた。
葬儀社は、AI活用の話が出るたびに「うちは特殊だから……」と一歩引く業界だと感じている。確かに、お客様が最も悲しく、最も傷つきやすい瞬間に寄り添う仕事だ。言葉ひとつのミスがクレームどころか、遺族の心に深い傷を残す可能性もある。
だからこそ私は思う。「AIに任せきりにするのではなく、正しい言葉の下書きをAIに作らせて、人間が確認して使う」というプロセスが葬儀社に最も向いているのではないかと。
今回は実際にAIに問いかけ、現場で使えるレベルの成果物を生成してみた。その全記録をお見せする。
実際にAIに頼んでみた
① 会葬礼状の作成
葬儀社が最も「言葉に迷う」業務のひとつが会葬礼状だ。通夜・葬儀に参列してくださった方への感謝状で、故人の名前・喪主の名前・使う言葉のひとつひとつに気を使う。私が実際にChatGPTに投げたプロンプトと、その回答がこれだ。
【実際に投げたプロンプト:全文】
あなたは葬儀社の経験豊富なスタッフです。
以下の情報をもとに、会葬礼状(参列者へのお礼状)を作成してください。
【故人情報】
・故人の続柄と名前:父・山田太郎(享年78歳)
・逝去の状況:病気療養中のため(詳細は不要)
・葬儀の形式:家族葬(一般会葬を制限した形式)
【喪主情報】
・喪主:山田花子(故人の妻)
・連名:子ども一同
【礼状の要件】
・文語調(現代語でありながら格調ある表現)
・参列してくださったことへの感謝
・故人が安らかに旅立てたことへの言及
・家族への温かい見守りのお願い
・忌み言葉(重ね言葉・直接的な死の表現)は使わない
・文字数:縦書き想定・280〜320字程度
また、以下の点に注意してください:
・「死ぬ」「死去」などの直接的な表現を避ける
・「重ね重ね」「ますます」などの重ね言葉を使わない
・「返す返す」「続いて」なども避ける
【AIの回答:全文(これがそのまま現場で使えるレベルのものです)】
謹啓
このたびは亡父 山田太郎の葬儀に際しまして
ご多忙の中ご会葬くださいまして
誠にありがとうございました
おかげをもちまして 滞りなく葬儀を執り行うことができました
故人もさぞかし喜んでいることと存じます
生前に賜りましたご厚情に深く感謝申し上げますとともに
今後も変わらぬご指導ご厚誼を賜りますよう
お願い申し上げます
略儀ながら書中をもちまして
御礼かたがたご挨拶申し上げます
謹白
令和 年 月
喪主 山田 花子
子ども一同
私のコメント: 一発でほぼ完成品が出てきた。忌み言葉のチェックもしっかりされており、文語調と現代的な読みやすさのバランスが取れている。実際の使用時は故人の名前・喪主名・日付を入れ、担当スタッフが一読して確認するだけでいい。作業時間は従来の30〜40分から、確認5分に短縮できる。
② 家族葬に関するホームページFAQの作成
葬儀社のホームページに「よくある質問」ページを作りたいが、「何と書けばクレームにならないか」「遺族の気持ちを傷つけない表現は何か」という不安から手が止まる——そんな声をよく聞く。実際に投げてみた。
【実際に投げたプロンプト:全文】
葬儀社のホームページに掲載する「家族葬についてのよくある質問」
ページを作成してください。
【前提条件】
・対象読者:家族葬を検討しているが、はじめての経験で不安な遺族・家族
・読者の心理:悲しみの中で情報を探している・不安が強い・押しつけがましい営業は嫌
・トーン:温かく・押しつけがましくない・専門的すぎない・「寄り添う」姿勢
【含めてほしいQ&Aのテーマ】
1. 家族葬とは何か(一般葬との違い)
2. 参列者の人数・範囲の目安
3. 費用の目安(具体額ではなく幅・傾向で)
4. 参列を断った方への連絡のタイミング
5. 香典・供花はどうするか
6. 家族葬でも葬儀の形式は選べるか(仏式・無宗教等)
【文体の注意点】
・「死亡」「遺体」などの直接的な言葉は避け、
「ご逝去」「お体」などの表現に統一する
・各Q&Aは500字以内で、読み手が「わかった」「安心した」と感じる構成に
・Q:は遺族が実際に抱く疑問を自然な言葉で表現する
【AIの回答:全文】
Q1. 家族葬とはどのようなご葬儀ですか?
家族葬とは、ご遺族やごく親しい方々だけで、少人数でお見送りをするご葬儀の形式です。一般葬と異なり、広くご案内をしないため、参列者の人数を絞った落ち着いた式となります。「大勢の方にご参列いただくよりも、近しい家族だけで静かにお見送りしたい」というご要望が増えており、近年多くの方にお選びいただいている形式です。規模は小さくても、心を込めた丁寧なご葬儀を執り行うことができます。
Q2. 参列していただく方の人数や範囲はどう決めればいいですか?
特に決まったルールはなく、ご家族のご意向で自由にお決めいただけます。目安として、ご家族・ご親族のみで10〜30名程度というケースが多いですが、ごく少人数の数名から、少し広めに50名程度まで、様々な規模で執り行われます。「誰を呼ぶか」に迷われる方も多いのですが、「生前に故人と親しくしていた方」「ご逝去をお伝えしたい方」を基準にお考えいただくと整理しやすいかと存じます。ご不安な場合は、担当スタッフにご相談ください。
Q3. 費用の目安を教えてください。
家族葬の費用は、参列人数・ご希望の内容・地域によって幅があります。一般的には一般葬と比べて参列者が少ない分、会場費・返礼品・料理の費用が抑えられる傾向があります。ただし、「少人数だから安い」とは一概には言えず、ご希望される祭壇やお棺の仕様によっては費用が変わります。まずはお気軽にお問い合わせください。ご予算や状況に合わせて、担当者が丁寧にご説明いたします。
Q4. 参列をご遠慮いただく方へは、いつ、どのようにお伝えすればよいですか?
一般的には、ご葬儀が終わった後(四十九日以降など)に、挨拶状やお手紙でご連絡される方が多いです。「家族葬のためご連絡が遅くなりました」という形でご報告し、生前のお付き合いへの感謝をお伝えする内容が基本となります。ご葬儀前にお伝えするかどうかは、お相手との関係によって判断される方が多く、一律の決まりはありません。ご不安な場合は、担当スタッフにご相談いただければ文例のご提案もできます。
Q5. 香典や供花はどうすればよいですか?
家族葬では「香典・供花をご辞退」とお伝えするケースと、「通常通りお受けする」ケースに分かれます。ご遺族のご意向が最優先ですので、迷われる場合は担当スタッフにご相談ください。「香典をいただいた場合の返礼品(香典返し)はどうするか」なども含めて、一緒に考えさせていただきます。参列された方が「何もできなかった」と感じないよう、事前にお伝えしておく言葉の文例もご用意しています。
Q6. 家族葬でも仏式・神式・無宗教など形式は選べますか?
はい、選んでいただけます。家族葬はあくまで「参列者の規模」を表す言葉であり、宗教的な形式とは別のものです。仏式(僧侶による読経)・神式・キリスト教式・無宗教式(音楽葬・お別れの会など)のいずれもお受けしています。「特定の宗教にこだわらず、故人が好きだった音楽を流すだけの、シンプルな式にしたい」というご要望にも対応しています。ご希望をお聞かせいただき、最善の形をご提案いたします。
私のコメント: これは本当に驚いた。「遺体」「死亡」という言葉が一切使われず、全体的に読み手の不安に寄り添う文体が自然に保たれていた。プロンプトで指定した「寄り添うトーン」が完全に反映されている。このFAQをホームページに載せるまでの作業時間は、確認・微調整込みで30分以内だろう。
③ スタッフ向け「言葉遣い研修資料」の自動生成
葬儀社の新人スタッフ研修で最も時間がかかるのが「言葉遣い」だ。「どの言葉を使い、どの言葉は使ってはいけないか」を体系的に教えるための資料を、研修担当者が一から作るのは大変だ。
【実際に投げたプロンプト:全文】
葬儀社の新人スタッフ向け「言葉遣い研修資料」を作成してください。
【目的】
・葬儀社スタッフとして遺族に接する際に使うべき言葉・避けるべき言葉を
体系的に学ぶ
・「悪気はなかったが傷つけてしまった」という失敗を防ぐ
【研修資料の構成】
1. 葬儀社での言葉遣いの基本姿勢(なぜ言葉が重要か・3つの原則)
2. 避けるべき言葉リスト(忌み言葉・直接的な表現・失礼な言い回し)
→ それぞれNG例とOK例(言い換え例)をセットで示す
3. シーン別の接遇フレーズ集
・ご遺族への初回対応(電話・来社)
・式場での案内・誘導
・お別れの場面での声かけ
・葬儀終了後のお見送り
4. よくある「うっかり言ってしまいがちな言葉」10選とその対処法
対象:葬儀業界未経験の新人スタッフ(入社1ヶ月以内)
文体:分かりやすく・具体的・暗記するより「考え方が身につく」形式で
【AIの回答:全文(抜粋・主要部分)】
葬儀社スタッフのための言葉遣い研修資料
1. 言葉遣いの基本姿勢——3つの原則
原則①「あなたは今、人生で最も辛い時間を過ごしている方の隣にいる」
葬儀の場に来られるご遺族は、大切な方を亡くされ、深い悲しみの中にいます。その状況で「うっかりした一言」が、想像以上の傷となることがあります。言葉を選ぶことは、プロとしての最低限の敬意です。
原則②「正確さより温かさを優先する」
情報を正確に伝えることは大切ですが、それ以上に「この人は私の気持ちをわかってくれている」と感じてもらえることが重要です。完璧な敬語より、心のこもった言葉を。
原則③「沈黙も言葉のひとつ」
何か言わなければという焦りから、余計な言葉を重ねてしまうことがあります。寄り添って静かにそばにいることが、最善の接遇になる場面も多いです。
2. 避けるべき言葉リスト(NG→OK言い換え表)
| NG(避けるべき表現) | OK(推奨する言い換え) | 理由 |
|---|---|---|
| 死亡・死体・遺体 | ご逝去・お体・故人様 | 直接的な死の表現を避ける |
| 生きていたころ | お元気だったころ・ご生前 | 死との対比を避ける |
| 死に顔 | お顔・お姿 | 直接的すぎる表現 |
| 自殺・事故死 | 突然のご逝去・思いがけないご不幸 | 死因の直接言及を避ける |
| 安いプランで | ご予算に合わせたご提案 | 値段の強調は失礼になる場合がある |
| 決まりましたか? | ご検討いただけましたか? | 急かす印象を与えない |
| 次の方もいるので | (使わない・急かさない) | 遺族への配慮を欠く |
| お疲れ様でした(葬儀後) | ありがとうございました・ご苦労様でした | 上から目線に聞こえる場合がある |
| わかりました | かしこまりました・承りました | 敬語の使い分け |
| ちょっと待ってください | 少々お待ちいただけますでしょうか | 丁寧さの差 |
3. シーン別の接遇フレーズ集
【ご遺族への初回電話対応】
(電話を受けた直後)
「このたびはご逝去のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。心よりお悔やみ申し上げます。このあといくつかご確認させていただいてもよろしいでしょうか。」
(詳細確認が必要な場合)
「大変お辛い中、恐縮でございますが、ご準備を進めるためにいくつかお伺いできますでしょうか。」
【式場での案内・誘導】
「こちらにお進みいただけますでしょうか。」(手の平を向けて身体全体で示す)
「足元にお気をつけください。」
「どうぞ、こちらにお座りください。」
【お別れの場面での声かけ】
「どうぞ、最後のお時間をゆっくりとお過ごしください。」
「お時間が来ましたら、お声がけいたします。どうかお気になさらず。」
(声かけが難しいと感じたときは)無理に声をかけず、少し離れて待つことも大切です。
【葬儀終了後のお見送り】
「本日はご多用の中、最後までお付き合いいただきありがとうございました。」
「○○様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。」
「どうぞ、お体に気をつけてお帰りください。」
4. うっかり言ってしまいがちな言葉10選
- 「大往生でしたね」→ 遺族にとっては年齢に関係なく悲しみは同じ。言わない。
- 「もう楽になられましたね」→ 「楽になった」という表現は遺族には届かないことが多い。
- 「お気持ちわかります」→ 本当にわかるはずがない。「どれほどお辛いか、お察しします」に変える。
- 「次のご予定は?」→ 葬儀後にすぐ「次」と言う表現は急かす印象を与える。
- 「他の方も同じようにされています」→ 比較は禁物。その方だけの葬儀という姿勢で。
- 「今日中に決めないと」→ 急かすことが遺族を傷つける。「ご都合が合うときに」を使う。
- 「それは無理です」→ 「少し難しい状況ではありますが、できる限り対応いたします」に。
- 「ご長男はどこですか」→ 家族構成を前提にした言い方は避ける。「喪主様はどちらでしょうか」。
- 「本当はこうした方がいい」→ 自分の価値観の押し付けに聞こえる。提案は「〜という方法もございますが」。
- 「よかったですね」→ どんな文脈でも、葬儀の場で「よかった」は使わない。
かかった時間と感想
この3つの成果物(会葬礼状・FAQ・研修資料)を生成するのにかかった時間は、プロンプトを書く時間も含めて合計で約35分だった。
正直、驚いた。
特に「言葉遣い研修資料」は、葬儀業界の専門知識がある人間が1〜2日かけて作るような内容が、一発で出てきた。忌み言葉の知識・シーン別フレーズ・「うっかり言ってしまいがちな言葉」のリスト——すべてが体系的にまとまっている。
もちろん、これで完成ではない。実際に使うには、担当スタッフが一読して「うちの事務所ではこう言っている」「この表現は地域の慣習と違う」という確認・修正が必要だ。でもそれは15〜30分でできる作業だ。
葬儀社の「言葉は怖い」という思いは正しい。だからこそAIを使って「まず正しい言葉の下書きを作り、プロが確認して使う」というプロセスが、業界に最も向いていると私は確信した。
AIに任せるのではなく、AIを使ってプロが仕上げる。それが葬儀社のAI活用の正解だ。
山崎恭平/AI内製化総合研究所 所長
株式会社インバウンドホールディングス専務取締役。営業と交渉の世界で成果を上げてきた一方、パソコン作業は横で支えてくれる事務方に頼りきりだった。AIの登場で、一番苦手だったパソコン作業が「自分でできる」に変わり、気づけば中小企業から上場企業まで10社以上のAI顧問を務めるように。スプレッドシートの関数すら分からなかった私でもできた——だから、誰でもできる。AIの学校や顧問にお金を払い続けるのは、本質的にもったいない。初期は人を頼ってもいい。でも最後は自分たちで内製してほしい。そんな思いで、このメディアを作った。

