和菓子屋の求人票に書かれている「製造補助・接客・SNS運用まで幅広くお任せ」という文言は、そのまま「AIに任せられる業務リスト」として読み替えることができる。
こんにちは、山崎恭平です。和菓子屋さんの求人を眺めていると、毎回同じような募集文言が並んでいることに気づきます。「製造のお手伝いから接客まで何でもやってもらいます」「SNSの更新もお願いしたい」「季節ごとの商品説明文も書いてほしい」——これ、ほぼ全部AIで対応できます。今回は求人票から逆算して、和菓子屋がAIをどこに使うべきかを整理します。
和菓子屋の現場と、求人票が物語る人手不足
和菓子屋は日本の伝統的な小売業の中でも、特に「職人技術+接客+情報発信」の三役をごく少人数でこなさなければならない業種です。
求人サイトで「和菓子屋 スタッフ」と検索すると、次のような募集文言が並ぶ傾向があります。
- 「製造の補助(あん炊き・成形のサポート)から販売まで」
- 「ギフト対応・のし掛け・包装作業」
- 「季節商品の説明・おすすめトーク」
- 「Instagramやラインの更新もお任せ」
- 「賞味期限・在庫管理のExcel入力」
つまり、1人のスタッフに製造・接客・事務・SNSという4役を同時に求めているわけです。これが人が定着しない最大の理由でもあります。仕事が多すぎる割に、覚えなければならないことも多い。特に季節ごとに商品が変わる和菓子屋では、そのたびに説明文を書き直す手間が生じます。
求人から読み取れる3つの困りごと
困りごと①:季節ごとの商品説明・POPの更新が追いつかない
和菓子は春夏秋冬に加え、節句・彼岸・盂蘭盆会・年末年始と、実質的に年間10回以上の「商品入れ替え」があります。そのたびに商品名・説明文・値付けの案内を作り直す作業が発生しますが、これを職人が仕込みの合間にやるのは限界があります。
困りごと②:ギフト対応・のし書き・包装指示の確認ミスが多い
「お名前を入れてください」「包み方はどうしますか」「のしの表書きは?」——ギフト商戦時(お盆・お中元・お歳暮)はこうした確認作業が集中します。電話・来店・オンライン注文が混在すると、メモや口頭確認だけでは抜け漏れが出やすくなります。
困りごと③:SNS・LINE発信のネタと文章が続かない
和菓子屋のInstagramは「映える商品写真+季節感のある文章」が基本ですが、毎週ネタを考えて文章を書くのは思いのほか時間がかかります。特に「季節の由来」「食べ方の提案」「職人のこだわり」など、教養と文章力を必要とする投稿は後回しにされがちです。
その困りごと、AIならこうなる
困りごと①への対応:商品説明文の量産
Before: 新商品のたびに職人か店主が手書き・手入力で説明文を作成。1商品30分かかることも。
After: 商品名・素材・季節感をAIに伝えれば2分で複数パターンの説明文が完成。
以下の和菓子の商品説明文を作成してください。
商品名:白玉ぜんざい(冷)
素材:北海道産大納言小豆、国産もち米白玉
価格帯:中価格帯
販売時期:7月〜9月
客層:30〜60代女性、ギフト需要もあり
【作成物】
① 店頭POP用キャッチコピー(30字以内)
② 商品説明文(80字以内、素材の産地と特徴を含む)
③ Instagram投稿用キャプション(150字・絵文字あり・ハッシュタグ8個)
困りごと②への対応:ギフト注文受付テンプレートの作成
Before: 電話・来店ごとに口頭で確認し、メモを取る。聞き漏らしが多い。
After: AIが作ったヒアリングシート(Google フォームや紙)を使い、注文情報を一元管理。
和菓子屋のギフト注文を受け付けるためのヒアリングシートを作ってください。
【含める項目】
- 注文者氏名・連絡先
- お届け先氏名・住所
- 商品名・数量・価格帯
- のし有無・表書き(例:御中元、御祝)
- 包装方法(個包装 / 箱入り / 風呂敷包み)
- お渡し日・お届け方法(来店受取 / 宅配)
- メッセージカードの有無・文面
- 備考(アレルギー等)
紙に印刷して使えるA4縦レイアウトの形式で出力してください。
困りごと③への対応:月間SNS投稿プランの作成
Before: 週2回の投稿ネタを毎週考えるのに1〜2時間かかる。
After: 月1回30分のプロンプト作業で翌月分の投稿テーマと文章が揃う。
和菓子屋(住宅街立地・1店舗)の8月のInstagram投稿計画を立ててください。
週2回(火・金)投稿。
テーマは「季節の由来と和菓子の関係」「商品紹介」「職人のこだわり」「ギフト提案」をバランスよく。
各投稿について「投稿日/テーマ/キャプション文(150字)/ハッシュタグ8個」を表形式で出力。
導入ステップと費用感
ステップ1(月1,000〜3,000円): ChatGPTまたはClaudeの有料プランを契約し、商品説明文・POP文言・SNS投稿文から試し始める。まずは1商品の説明文を作ってみることから。
ステップ2(月0〜5,000円): Googleフォームでギフト注文受付シートを作成。AIにシート設計を手伝ってもらい、電話・来店・オンライン注文を一本化する。
ステップ3(月3,000〜1万円): SNS投稿を月単位でAIに設計させ、予約投稿ツール(BufferやCanvaのスケジュール機能)と組み合わせる。これで「ネタ切れ」と「深夜の投稿作業」から解放される。
なお、こうしたデジタル化・AI導入への投資は、デジタル化・AI導入補助金(最大450万円・補助率1/2〜2/3、最新の公募要領で要確認)の対象となる可能性があります。申請を検討する価値は十分あります。
よくある質問
Q. 和菓子の文化的な背景や季節の由来まで、AIは正確に書けますか?
AIは和菓子の文化・歳時記に関する基礎知識をある程度持っています。ただし、地域固有の風習や店独自のこだわりは必ずプロンプトで補足してください。事実確認は仕上げに必ず行うことが大切です。
Q. 職人の感性や手作り感が損なわれませんか?
AIが担うのは「言葉を整える作業」です。どんな素材を使い、どんな気持ちで作っているかは職人自身が決めること。その想いをAIに伝えれば、むしろ言語化しきれていなかった魅力を引き出してくれることもあります。
Q. パソコン操作が苦手でも使えますか?
スマートフォンからChatGPTに話しかけるだけでも使えます。「声で話す→テキスト変換→コピー」という流れで、キーボード入力不要で活用できます。苦手意識は最初の一回を乗り越えると消えます。
山崎恭平/AI内製化総合研究所 所長
株式会社インバウンドホールディングス専務取締役。営業と交渉の世界で成果を上げてきた一方、パソコン作業は横で支えてくれる事務方に頼りきりだった。AIの登場で、一番苦手だったパソコン作業が「自分でできる」に変わり、気づけば中小企業から上場企業まで10社以上のAI顧問を務めるように。スプレッドシートの関数すら分からなかった私でもできた——だから、誰でもできる。AIの学校や顧問にお金を払い続けるのは、本質的にもったいない。初期は人を頼ってもいい。でも最後は自分たちで内製してほしい。そんな思いで、このメディアを作った。
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