顧問を切られる日を、私は待っている

083 所長コラム

「顧問を切られる日を、私は待っている」——これは私が関わる会社に対して、最初の打ち合わせで必ず伝える言葉です。

変な顧問だと思いますよね。でもこれが本音です。

AI内製化の支援をしている私が、本当に嬉しいのは「ありがとうございました、もう自分たちでできます」という言葉をもらう瞬間です。反対に、「先生がいないと不安で」という状態が続いている会社を見ると、心の中で「しまった、依存を作ってしまった」と反省します。


1. 「顧問ビジネス」の構造的な問題

AI顧問・DXコンサルタント・ITアドバイザー。肩書きは様々ですが、彼らのビジネスモデルの多くは「月次顧問料の継続受け取り」です。

これ自体が悪いわけではありません。問題は、その構造がインセンティブを歪める可能性があることです。

顧問が「あなたの会社が自走できる状態」を目指して全力を出すと、自分の仕事がなくなる。意識するかどうかに関わらず、「少しだけ依存関係を残しておく」方向に引力が働きやすい。

私も顧問という立場で仕事をするので、自戒を込めて言います。顧問の評価は「いかに早くいなくなれたか」で測るべきです。


2. 「依存体質」は会社の体力を奪う

AIコンサルに月30万円払い続ければ年間360万円。5年で1,800万円。

その期間、会社の中に何が積み上がりましたか?

外部の専門家が作ったプロンプト。外部の担当者が管理しているシステム。その人がいなくなったら、翌月から何もできない——という状態になっていませんか。

私が宿泊事業を運営していて痛感したことがあります。「この業者がいないと回らない」という状態は、交渉力ゼロを意味します。料金を上げられても断れない。担当者が変わるたびにゼロから説明しなければならない。そのたびに時間とお金が消える。

AI・DX領域でも同じことが起きています。内製化せずに外注し続けると、知識・ノウハウ・判断力が全部外に出たままになる。


3. 「自走できる状態」とは何か

私が考える「自走できる状態」には5つの要素があります。

① 経営者自身がAIを触れる
「使い方を社員に任せている」では足りない。経営者本人がプロンプトを書き、結果を評価できること。これが土台。

② 社内にAI推進の担当者がいる
外部に頼らず、社内で改善を積み重ねていける人材が育っていること。1人でいい。その1人が他の社員を引っ張れる状態が理想。

③ 業務フローがドキュメント化されている
「誰でも再現できるマニュアル」がある状態。AIを使うプロセスが属人化していると、担当者が異動したときに崩壊する。

④ 失敗を自己診断できる
「このプロンプトはなぜ結果が悪かったか」を自分たちで考えて修正できること。外部に答えを求め続けない。

⑤ 新しいツールを自分たちで評価できる
「このツールを入れたほうがいいですか?」を顧問に聞かなくてもよい状態。自分たちで比較・判断できること。

この5つが揃った会社は、顧問なしで進化し続けます。


4. 私が「切られ待ち」な理由

支援を始めて6〜12ヶ月、この5条件が揃ってきた会社から「もう大丈夫です」という連絡が来ることがあります。

その瞬間、私は心の底から「よかった」と思います。

自分の仕事がなくなったのではなく、仕事が「完了した」のです。その会社はこれからずっと、顧問料をかけずに自走していく。それが本当の意味での投資対効果です。

一方で、3年経っても毎月連絡してくれる会社もある。それは「まだ頼ってくれている」のか「まだ切れない状態にしてしまっている」のか——私は常にその問いと向き合っています。

顧問が必要な期間は存在する。でも「ずっと必要」は間違っている。

早く切れる会社になることが、AI内製化のゴールです。


5. 明日から「自走の準備」を始める3ステップ

理想論だけでは動けないので、具体的なアクションも書いておきます。

ステップ1:今の顧問に「いつ独り立ちできますか?」と聞く
この質問に「6ヶ月後に自走できる状態を目指しましょう」と答えてくれる顧問は信頼できます。「それはケースによります……」と濁す顧問は注意が必要です。

ステップ2:社内の「AI担当」を1名決める
正式な辞令でなくていい。「うちのAI係」でいい。その1人が勉強し、他の社員に共有する構造を作る。

ステップ3:外部に聞く前に「自分たちで30分考える」ルールを作る
すぐ顧問にLINEする習慣をやめる。まずChatGPTかClaudeに聞いてみる。それでもわからなければ顧問へ。この順番を変えるだけで、自走力が驚くほど早くつく。


よくある質問

Q1. 「顧問を切る」ことへの不安があります。本当に大丈夫ですか?
A. 不安は自然です。ただ「不安だから切れない」が続くと、永遠に自走できない。大切なのは「切る準備」が整ってから切ることです。本文の5条件を一つずつ揃えていく過程で、不安は消えていきます。

Q2. 現在AIコンサルと契約中です。関係を壊さずに内製化を進めるには?
A. 「一緒に社内の自走体制を作っていきたい」とストレートに伝えてください。それを歓迎してくれる顧問は本物です。嫌な顔をされたなら、それが答えです。

Q3. 顧問なしで始めるための最初の一歩は何ですか?
A. まず経営者自身がChatGPTかClaudeの有料プランに登録し、1週間で10回使うことです。「自分でも使える」という自信が、すべての始まりになります。


この記事を書いた人

山崎恭平/AI内製化総合研究所 所長
株式会社インバウンドホールディングス専務取締役。営業と交渉の世界で成果を上げてきた一方、パソコン作業は横で支えてくれる事務方に頼りきりだった。AIの登場で、一番苦手だったパソコン作業が「自分でできる」に変わり、気づけば中小企業から上場企業まで10社以上のAI顧問を務めるように。スプレッドシートの関数すら分からなかった私でもできた——だから、誰でもできる。AIの学校や顧問にお金を払い続けるのは、本質的にもったいない。初期は人を頼ってもいい。でも最後は自分たちで内製してほしい。そんな思いで、このメディアを作った。

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