商談の受注率は、商談当日の話術よりも事前準備の質で決まります。そして今や、その準備の大部分をAIに任せることができます。
正直に言います。私はかつて「事前準備が苦手な経営者」でした。商談前夜に相手の会社を検索して、なんとなく頭に入れて臨む。でもそれだと、相手の本当の課題は見えていないし、刺さる提案もできない。
AIを使い始めてから変わりました。今は商談の30分前でも、的を射た準備ができます。そして実際に、以前と比べて商談のクオリティが上がったと手応えを感じています。
今回はその具体的な手順を、実際のプロンプトとともに公開します。
1. AI商談準備の全体像:3ステップ
私が毎回やっている商談準備は、以下の3ステップです。所要時間は慣れれば20〜30分です。
ステップ1:相手企業のリサーチまとめ(10分)
ステップ2:提案の切り口・質問リストの生成(10分)
ステップ3:想定QA・反論対応の確認(5〜10分)
以下で各ステップの具体的な手順とプロンプトを公開します。
2. ステップ1:相手企業リサーチをAIにまとめさせる
まず相手企業のWebサイトのトップページ・会社概要・事業内容・採用ページ・プレスリリースを確認します。内容をコピーしてAIに貼り付け、以下のプロンプトを使います。
使用プロンプト:
「以下は◯◯社のWebサイトのテキストです。この企業について(1)事業の強みと特徴(2)現在注力していること(3)経営上の課題として考えられること、の3点を箇条書きで整理してください。〔Webテキストを貼り付ける〕」
これで1〜2分で相手企業の概要が整理されます。重要なのは「課題として考えられること」の欄です。ここが商談での切り口になります。
私の現場では、たとえば「採用ページに力を入れていると分かった」というリサーチから「人材採用に課題がある可能性」を推定し、関連するサービス提案を準備する、という流れで使っています。
3. ステップ2:初回商談用の質問リストを生成する
リサーチの結果を踏まえ、商談で使う質問を作ります。
使用プロンプト:
「あなたはB2B営業のプロです。私が提案するのは〔サービス・商品の概要〕です。相手は〔企業の課題推定〕に悩んでいる可能性があります。初回商談で相手の課題を深掘りするための質問を、SPIN話法に基づいて5つ作ってください。」
SPIN話法とは、Situation(状況)・Problem(問題)・Implication(影響)・Need-payoff(解決効果)の4段階で相手の課題を引き出す質問手法です。AIにこの手法を指定すると、実践的な質問リストが出てきます。
この質問リストを手元に置いて商談に臨むだけで、「何を聞けばいいかわからない」という迷いがなくなります。
4. ステップ3:反論への回答をAIで事前に準備する
「商談で詰まる場面」はだいたいパターンがあります。AIでその回答を事前に用意しておきます。
使用プロンプト:
「私が提案する〔サービス・商品〕に対して、相手から『価格が高い』『今は予算がない』『他社で検討中』と言われた場合の、誠実で説得力のある返し方を3パターン考えてください。」
これを読んでから商談に入ると、「詰まる場面」への心理的な準備ができます。
私は以前、価格交渉で何度も言葉に詰まっていました。AIで事前に回答を作っておくだけで、その場での返答の質が変わりました。
5. AIに任せられないこと:人間がやるべき最後の1割
AIはリサーチ・構造化・言語化が得意です。でも、「この人と信頼関係を作りたい」という意志はAIから生まれません。
商談前の最後の10分は、画面を閉じて「自分はこの会社に何をしてあげたいか」を考える時間にしてください。AIで準備した内容を「自分の言葉で話す」ためのインプットにする。そのバランスが、AIと人間の最高の組み合わせです。
よくある質問(FAQ)
Q1. AIを使って準備した内容は、相手にバレますか?
A. AIは「下書きの補助」として使うものです。出力をそのまま読み上げるのではなく、自分の言葉で話す材料として使えば、相手からはわかりません。むしろ準備が行き届いていると感じてもらえます。
Q2. 初回商談と提案商談で準備の仕方は変わりますか?
A. 変わります。初回商談はリサーチと質問リスト中心。提案商談は「相手の前回発言をもとにした提案の組み立て」にAIを使います。前回の商談録音の要約をAIに渡して「次回提案のポイントを整理して」と指示するのが有効です。
Q3. 相手企業の情報を入力することは問題ありませんか?
A. 公開情報(Webサイト・プレスリリース等)の入力は一般的に問題ないとされますが、相手から受け取った機密情報・契約書内容などはAIに入力しないことが原則です。社内規程に従って判断してください。
この記事を書いた人
山崎恭平/AI内製化総合研究所 所長
株式会社インバウンドホールディングス専務取締役。営業と交渉の世界で成果を上げてきた一方、パソコン作業は横で支えてくれる事務方に頼りきりだった。AIの登場で、一番苦手だったパソコン作業が「自分でできる」に変わり、気づけば中小企業から上場企業まで10社以上のAI顧問を務めるように。スプレッドシートの関数すら分からなかった私でもできた——だから、誰でもできる。AIの学校や顧問にお金を払い続けるのは、本質的にもったいない。初期は人を頼ってもいい。でも最後は自分たちで内製してほしい。そんな思いで、このメディアを作った。
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