「うちの社員はAIを使えない」は経営者の言い訳である

所長コラム

「うちの社員はAIを使えない」という言葉は、多くの場合、経営者自身がAIを使えていないことへの言い訳です。

きつい言い方をしました。でも、これは本当のことです。

私も最初はそう思っていました。「うちの従業員は年齢層が高い。ITが苦手な人が多い。だから難しい」と。でも、よく考えてみると——私自身がChatGPTをほとんど触っていなかった。社員に使い方を見せたことも、使って成功した事例を共有したこともなかった。

環境も仕組みも作らずに、「社員が使わない」と言うのは、種を植えずに「芽が出ない」と嘆くのと同じです。

1. 社員がAIを使わない本当の理由3つ

現場の声をもとに、社員がAIを使わない理由を整理すると、だいたい3パターンに集約されます。

理由1:何をすればいいかわからない
「使っていいとは言われたが、何に使えばいいのか具体的に教わっていない」。これが最多の声です。AIは汎用ツールなので、使い方を自分で考えなければなりません。普通の社員がゼロから考えるのは難しいのです。

理由2:使って失敗するのが怖い
「間違ったことを対外的に言ってしまったら怒られる」「情報を漏らしたら問題になる」。ルールが曖昧なまま放置されていると、社員は怖くて使えません。萎縮は環境の問題です。

理由3:使わなくても怒られない
結局これです。AIを使った社員が評価され、使わない社員が遅れていくという仕組みがなければ、現状維持が最も安全な選択肢になります。人は明示的なインセンティブに動く。

これらはすべて、経営者が仕組みを作れば解決できる問題です。

2. 経営者がまずやるべきこと:3つのアクション

「使わせる仕組み」を作るのは経営者の仕事です。以下の3つから始めてください。

アクション1:経営者自身がAIを使った成果を見せる
「私がChatGPTを使ったら、この企画書が30分で書けた」という実体験を会議や朝礼で話す。これが社員への最大の許可証になります。トップが動けば空気が変わります。

アクション2:「まず試す」の安全地帯を作る
「失敗しても怒らない練習タイム」を1ヶ月設ける。毎週1つ、AIを使った業務チャレンジを報告してもらう。失敗談も笑って聞く姿勢が安心感を生みます。私が宿泊事業でやったときは、最初の1ヶ月で「こんな使い方があったのか」という発見が社内に溢れました。

アクション3:推進担当を1名任命し、成功事例を横展開する
全社員に一律にやらせようとすると動きません。まず1人のAI推進担当が成功事例を作り、それを他の社員に横展開する流れが最速です。推進担当は「AIに詳しい人」でなくていい。「素直で行動力がある人」を選ぶことが大切です。

3. 「社員のせい」にしている間に競合は追い抜いていく

2026年の調査では中小企業のAI導入率は12〜20%です。逆に言えば、まだ8割の会社が本格活用できていない。今が先行者になれる最後のチャンスです。

「うちは社員が…」と言っているライバル企業を横目に、仕組みを作って動いた会社が半年後には大きな差をつけている。私はこれを実際に目の当たりにしています。

言い訳を言っていい立場は誰にもありません。経営者なら特に。

4. AI活用が進む会社の共通点

私がこれまで見てきた「AI活用が進んでいる中小企業」には共通点があります。

経営者が最初に動いていること。プロンプトテンプレートなど「再現できる仕組み」を作っていること。使った人が評価される雰囲気があること。そして、「失敗を笑って共有できる文化」があること。

これらはツールでも予算でも技術でもない。すべて「経営の意思」の問題です。

社員は思っている以上に、上が動くのを待っています。


よくある質問(FAQ)

Q1. ベテラン社員がAIを拒否します。どうすれば使ってもらえますか?
A. 強制ではなく「体験」から入るのが効果的です。「このメール返信を30秒で書いてみます」という実演を見せると、抵抗が驚くほど下がります。「自分の仕事がなくなる」という不安が抵抗の根本にあることが多いため、「楽になるツール」という文脈で伝えることがポイントです。

Q2. AI研修を外部に頼もうと思っています。効果はありますか?
A. 単発の外部研修だけでは定着しないことが多いです。研修後に「使う機会」と「振り返りの場」がなければ忘れます。研修はきっかけとして有効ですが、その後の社内の仕組みづくりとセットで考えることが大切です。

Q3. 小さな会社でも推進担当を置けますか?
A. 専任でなくて構いません。週に2〜3時間だけAI活用の情報を集めて共有する役割を担ってもらうだけで十分です。肩書きより「この人に聞けばいい」という存在を作ることが目的です。


この記事を書いた人

山崎恭平/AI内製化総合研究所 所長
株式会社インバウンドホールディングス専務取締役。営業と交渉の世界で成果を上げてきた一方、パソコン作業は横で支えてくれる事務方に頼りきりだった。AIの登場で、一番苦手だったパソコン作業が「自分でできる」に変わり、気づけば中小企業から上場企業まで10社以上のAI顧問を務めるように。スプレッドシートの関数すら分からなかった私でもできた——だから、誰でもできる。AIの学校や顧問にお金を払い続けるのは、本質的にもったいない。初期は人を頼ってもいい。でも最後は自分たちで内製してほしい。そんな思いで、このメディアを作った。

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