AI内製化90日ロードマップとは、外部依存ゼロで自社がAIを使いこなせる状態を作るために、最初の90日間でやるべきことを経営者・推進担当・現場スタッフ別に整理した実行計画です。
「何から始めればいいか分からない」という声を、本当によく聞きます。そしてその答えを「まずは勉強会を」「ツールを選んで」と返す人も多い。でも私は違うと思っています。
内製化の最初の一手は「経営者が今日AIを1回使う」ことです。 それ以外の準備はあとからついてきます。
この記事では、私が実際に経験してきた試行錯誤をもとに、90日間の具体的な動きを公開します。
フェーズ1(1〜30日目):体験と種まき
最初の30日は「成果を求めない」期間です。成果を焦ると必ず迷走します。
1〜7日目:経営者が体験する
まず経営者自身がAIを毎日1回使います。使う内容は何でも構いません。
- 朝の情報収集をAIに要約させる
- 会議アジェンダを作らせる
- メール返信の文案を作らせる
7日間続けると「これは使える」「ここは使えない」という感覚が生まれます。この感覚こそが、この後の意思決定の基盤になります。
8〜14日目:業務棚卸しをする
「繰り返し発生する業務」を会社全体で書き出します。フォーマットは単純で構いません。「業務名・担当者・週の所要時間・手作業の割合」の4列だけで十分です。
10〜20個リストアップできれば、AI化の優先度が自然に見えてきます。
15〜30日目:1業務を選んで試す
リストの中から「効果が高そうで失敗しても影響が少ない業務」を1つ選び、AI化を試みます。推奨は「定型メールの作成」「週次レポートの下書き」「会議の議事録要約」のいずれかです。
Before(従来の時間・手順)とAfter(AI使用後の時間・手順)を記録してください。この記録がフェーズ2で最強の説得材料になります。
フェーズ2(31〜60日目):拡張と組織化
体験と成功事例が1つできたら、組織に広げる段階です。
31〜40日目:AI推進担当者を任命する
社内でAIへの関心が高い社員を1名「AI推進担当」に任命します。役職・給与の変更は不要です。「あなたに任せたい」という経営者の言葉と、推進担当という肩書だけで十分です。
この担当者には、フェーズ1で作ったBefore→Afterの事例を共有し、「これを他の業務・他の社員にも広げてほしい」と伝えます。
41〜50日目:社内AIルールを作成する
5〜10項目のシンプルな利用ルールを文書化します。
必ず含めるべき項目:
– 顧客の個人情報・氏名をAIに入力しない
– 未公開の経営数値・契約情報を入力しない
– AI生成コンテンツを社外に出す際の確認手順
– 使用を許可するツールの一覧
ルールが存在することで、現場は「何をやっていいか」が明確になり、動きやすくなります。
51〜60日目:部署を1つ横展開する
フェーズ1で試した業務と同じ、または類似の業務を別部署で試します。推進担当者が中心となって説明会を開き、「使ってみた感想」を集めます。
ここで重要なのは「全員に使わせる」ことではなく「試したい人が試せる環境を作る」ことです。強制は逆効果です。
フェーズ3(61〜90日目):自走と評価
最後の30日は「自走の仕組みを作り、評価する」フェーズです。
61〜75日目:週次共有の場を設ける
週1回15〜30分、「AIを使ってこんなことができた」という共有会を設けます。参加は任意でも構いません。発表者が3名以上いれば、自走の文化が生まれてきます。
この場はAI推進担当者が運営し、経営者はたまに顔を出してコメントするだけで十分です。「経営者が管理する場」ではなく「現場が自分たちで運営する場」にすることがポイントです。
76〜90日目:3ヶ月の成果を評価し次の目標を設定する
90日間でできたことを数値化します。
- AI化した業務数
- 削減できた時間(週◯時間)
- 活用している社員の割合
- 生まれた社内事例の数
数値が小さくても問題ありません。「0から動き始めた」こと自体が成果です。そして次の90日の目標を、推進担当者と一緒に設定します。
外部支援を使う場合の注意点
立ち上げ期に外部の伴走支援を使うことは否定しません。私自身も知識のインプットに外部を活用したことがあります。
ただし鉄則が1つあります。「いつ外部支援を終了するか」を最初に決めること。 目安は6〜12ヶ月以内です。
外部支援が長引けば長引くほど、内製化は後退します。社内に「外部の人がいないと動けない」という文化が定着してしまうからです。
自走できる会社になることが、外部支援を使う意義です。「早く外部支援を卒業できる会社になってください」——これが支援の本来の姿です。
よくある質問
Q1. 90日で内製化は完了しますか?
A. 「完了」の定義によります。90日で「複数の業務がAI化され、推進担当者がいて、社内ルールが整い、月次で改善が回る状態」は作れます。それが内製化の第一段階です。完全な自走まではさらに6〜12ヶ月かかりますが、最初の90日で土台は十分作れます。
Q2. 小規模で人手が足りない場合でも90日ロードマップは使えますか?
A. 使えます。人数が少ない会社ほど、1人がAIを使いこなすインパクトが大きいです。フェーズ1だけ経営者が一人でやり、フェーズ2から社員1名を巻き込む進め方で十分機能します。
Q3. 途中で止まってしまった場合どうすればいいですか?
A. 止まったフェーズから再開するだけです。0から始める必要はありません。「どこで止まったか」を把握すれば、再スタートのポイントが明確になります。止まったこと自体は失敗ではなく、次に活かせる情報です。
この記事を書いた人
山崎恭平/AI内製化総合研究所 所長
株式会社インバウンドホールディングス専務取締役。営業と交渉の世界で成果を上げてきた一方、パソコン作業は横で支えてくれる事務方に頼りきりだった。AIの登場で、一番苦手だったパソコン作業が「自分でできる」に変わり、気づけば中小企業から上場企業まで10社以上のAI顧問を務めるように。スプレッドシートの関数すら分からなかった私でもできた——だから、誰でもできる。AIの学校や顧問にお金を払い続けるのは、本質的にもったいない。初期は人を頼ってもいい。でも最後は自分たちで内製してほしい。そんな思いで、このメディアを作った。
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