【ニュース解説】Sakana AIが「Fugu Max」「Fugu Ultra v2」を発表、AIの使い分けを任せる国産モデルが出力100万トークン6ドルで登場——中小企業のAI内製化に何が変わるか

日本のAI企業Sakana AIは2026年9月11日、複数のAIモデルを自動で使い分ける「Sakana Fugu」の新モデル「Fugu Max」と「Fugu Ultra v2」を提供開始したと発表しました。各社報道によると、Fugu Maxは出力100万トークンあたり6ドルという低価格帯を打ち出し、特定のAI会社1社に依存しない設計を売りにしています。「どのAIを選ぶか」で悩んできた中小企業にとって、選ぶ作業そのものをAIに任せる選択肢が国内発で出てきた、という点が今回のポイントです。

何が発表/起きたのか(事実)

Sakana AIの公式サイトおよびAI Watch(インプレス)の報道によると、同社は9月11日、「Fugu Max」と「Fugu Ultra v2」の2モデルをリリースし、同日からOpenAI互換API(ChatGPTを提供するOpenAIと同じ接続方式で使えるプログラム向け窓口)を通じて提供しています。既存ユーザーは設定パラメータを1行変更するだけで新モデルへ移行できるとされています。

Sakana Fuguは、それ自体が1つの巨大AIというより、「複数のAIモデルを束ねて、タスクごとに最適なモデルへ仕事を振り分ける指揮役のモデル」です。公式サイトでは「マルチエージェントを指揮する、一つのモデル」と説明されています。今回の2モデルは、同じ仕組みを異なる目的に最適化したものです。

Fugu Max:コスト重視

公式サイトおよび各社報道によると、Fugu Maxは入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり6ドルで、同社はこの出力料金を「Sonnet 5、GPT 5.6 Terra、Kimi K3より40〜60%低い」と説明しています。NVIDIAのNemotronファミリーを含む多数のオープンウェイトモデル(重みが公開されているAIモデル)や特化型モデルを統合し、「タスクを解ける最も軽量なモデルへ動的に振り分ける」ことで、少ないトークン消費で結果を出す設計だとしています。同社発表では、10のベンチマークのうち7つでコストパフォーマンスの最前線を押し広げたとされています。

Fugu Ultra v2:品質重視

Fugu Ultra v2は、複雑な多段階の推論やソフトウェア開発など、品質を最優先する用途向けです。公式サイトによると、料金は入力100万トークンあたり5ドル、出力30ドル、キャッシュ入力0.50ドル(コンテキスト272Kトークン超は割増)です。同社発表では、8つのベンチマークのうち5つで最高または最高タイ、7つで上位2位に入ったとされています。また、Fable 5、Fable 5.1、GPT-6-AstraはFugu Ultraのモデルプール(振り分け先の候補群)に含まれていないと明記されています。

提供形態と制約

公式サイトによると、サブスクリプションはStandard(月20ドル)、Pro(月100ドル・Standardの10倍の利用枠)、Max(月200ドル・同20倍)の3段階で、いずれのプランでもFugu、Fugu Ultra、Fugu Maxが利用できます。本格的な業務利用には従量課金のトークンプランを推奨しています。一方、EU・EEA域内では現在提供されていないこと、Fugu UltraとFugu Maxは振り分け先のモデルプールが固定で、標準の「Fugu」のみ特定モデルを除外できることも公式サイトに記載されています。なお、各クエリでどの基盤モデルが使われたかは開示されない仕様です。

各社報道によると、Fuguは2026年4月にβ版、6月に一般提供とUltra v1、7月にFugu-CyberとClaude Code対応、8月にSakana ChatとNVIDIAとの協業、そして9月11日に今回のリリースと、ほぼ毎月更新を重ねてきました。

中小企業の内製化にとっての意味(当研究所の視点)

AI内製研がこのニュースで注目するのは、性能の数字そのものではありません。「どのAIを選ぶか」という経営者の判断コストが、商品として切り出されたことです。

この半年、GPT・Gemini・Claudeの世代交代は月単位で起きています。中小企業の現場で起きているのは「モデルが変わるたびに、社内ツールの接続先を変え、指示文を調整し直す」という見えない工数です。Fuguのような「指揮役モデル」は、その乗り換え作業を上のレイヤーで吸収する発想です。たとえるなら、これまでは社長が毎回「今日の仕事はA社に頼むかB社に頼むか」を決めていたのが、外注管理の番頭を1人置いて任せるようなものです。番頭の腕が確かなら、社長は仕事の中身に集中できます。

もう一つは、国内企業がこの領域に本気で参入しているという点です。Sakana AIが「ベンダーロックイン、APIの提供停止、地政学的な不確実性からユーザーを保護する」と明言しているのは、海外1社に業務を預ける不安を抱える日本の中小企業には刺さる訴求です。ただし、ここは冷静に見る必要があります。公表されているベンチマークはすべて同社発表であり、独立した第三者による再現はこれからです。AlphaSignalも「独立に再現されるまではベンダー報告の数字」と注記しています。

そして、正直に書いておくべき論点があります。多くの中小企業にとって、今日のこのニュースは「すぐ使うもの」ではなく「知っておくべきもの」です。ChatGPTやClaudeをチャット画面で使っている段階の会社にとって、APIの振り分けレイヤーはまだ関係が薄い。逆に、問い合わせの自動分類、請求書の読み取り、日報の要約など、APIで社内ツールを動かし始めた会社には、今回の発表は「コストと乗り換え負担を同時に下げる候補が増えた」という意味を持ちます。自社がどちらの段階にいるかで、反応の仕方が変わります。

では、何をすべきか(実務アクション)

ステップ1:自社のAI利用を「画面」と「API」に仕分けする

まず、社内でAIがどう動いているかを紙1枚で整理してください。社員がチャット画面に打ち込んで使っているものは「画面」、社内システムやスプレッドシートから自動で呼び出しているものは「API」です。「画面」だけの会社は、今回は情報として押さえるだけで十分です。無理に触る必要はありません。

ステップ2:「API」があるなら、一番重い業務1本で比較テストをする

APIで動く業務がある会社は、月額20ドルのStandardプランか従量課金で、Fugu Maxを試してください。OpenAI互換とされているため、接続先のURLとモデル名を変えるだけで既存の指示文がそのまま使える可能性があります。比べ方は単純で、今一番トークンを消費している業務1本を、現行モデルとFugu Maxに同じ指示で投げ、「結果の質」「かかった料金」「応答時間」の3点を並べるだけです。ベンチマークの数字を信じるのではなく、自社の業務で測る。これが内製化の基本動作です。

ステップ3:データの行き先を確認してから本番に載せる

Fugu MaxとFugu Ultraは、どの基盤モデルにデータが渡ったかを開示しない仕様です。顧客情報や契約書など機密性の高いデータを扱う業務では、特定モデルを除外できる標準の「Fugu」を使う、コンソールで学習データ利用のオプトアウト(自社データをAIの学習に使わせない設定)を行う、といった手当てを先に済ませてください。また、EU・EEAでは提供されていないため、欧州拠点や欧州顧客向けの業務には現時点で使えません。

この3ステップは、すべて社内の担当者1人と月20ドルで回せます。「モデル選定はコンサルに聞かないと分からない」という時代は、選ぶ作業そのものが商品になったことで終わりつつあります。ここまで来たら、顧問は要らない。早く切っていい。

よくある質問

Q1. Fugu Maxは、ChatGPTやClaudeの代わりになりますか?

用途によります。Fugu MaxやFugu Ultraは主にAPI経由で社内ツールや自動化に組み込むためのもので、社員が日常的にチャットで使う用途とは性格が異なります。公式サイトでは日常的なカジュアルな用途にはサブスクリプションプラン、本格的なワークロードにはトークンプランを推奨しています。まずはステップ1の仕分けから始めてください。

Q2. この情報は確かですか?

本記事はSakana AIの公式サイトおよびAI Watch(インプレス)、MarkTechPost、AlphaSignalの各社報道に基づいています。ただし、性能に関するベンチマーク数値は同社発表であり、独立した第三者による検証はこれからです。提供時期、料金、仕様は変わる場合がありますので、最新の情報は文末の出典で必ずご確認ください。

出典

著者:山崎恭平/AI内製化総合研究所 所長

株式会社インバウンドホールディングス専務取締役。スプレッドシートの関数すら分からなかった私が、AIで一番苦手だったPC作業を「自分でできる」に変えた。だから誰でもできる。

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